コラム

フランス政府 ルノーと日産の経営統合を要求 出資比率問題に日産苦戦

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こんにちわ!

日産を取り巻く状況が日々変化し、要注目状態が続いています。ただこんなに早くフランス政府からあからさまな日産の乗っ取り!?のような経営統合要求が来るとは思いもしていなかったので、こちら見ていきたいと思います。

 

経営統合とは何か?

フランス政府から今回要求のあった経営統合とはどのような物なのかを見ていきます。

経営統合とは2つ以上の複数の企業が新たに持ち株を管理する新しい会社を作り、その傘下に入る事を意味します。そのため、会社自体は存続し、これまで通りの人事制度や給与制度は維持されます。

つまり、傘下の会社から見れば大きくは変わりません。

一方で合併の場合は2つ以上の複数の企業が完全に1つの会社になる事を指し、どちらかの会社の制度がなくなってしまいます。合併によって役職者が役職を失う、という事も出てくるでしょう。

経営統合を実施する事のメリットとしては同じ傘下企業と物流共有による経費削減であったり、業界内順位が上がる事によるスケールメリットを享受できる等のシナジー効果が期待出来ます。

一方で合併と異なりそれぞれの企業文化やシステムが存続するため、連携が難しくシナジー効果が出ない、またはシステム統合などの費用が掛かる、という面もあります。また子会社から見れば親会社に対してのお伺いをする機会が増えるため、予想以上にスピード感が落ちるという事も想定されます。

経営権については持ち株親会社の株式比率に依存します。どの程度傘下企業の株式を保有するかによって完全に経営権を保有するのか、それとも一部のみの経営権を保有するか、等です。

 

このような経営統合ですが、フランス政府からの要求を簡単に言ってしまえば、

あなた達の会社は社内ガバナンスも心配だから私達(フランス政府)が親会社となって管理します。会社の制度等はそのままにするから経営権は渡しなさい。

という事かなと思っています。

 

 

出資比率のねじれの問題

以下の記事にも書きましたが、フランス政府がルノーの株式の15%を持つ大株主であり、ルノーは日産株を43.4%も持つ会社です。日産はルノー株を15%しか保有していないため、実質的には日産はルノーの子会社状態になっています。

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ただし、これは保有株式比率の話であり、売上や社員数などについては日産が圧倒しています。そのため、この関係解消に向けてルノー株の買い増しをし、対等な関係を日産側は何度も求めましたが、ルノーもといフランス政府は断固として認めませんでした。

フランス政府としてもフランスの失業率が10%を超える状態が続いており、経済対策が急務なため、ドル箱の日産を簡単には手放せず、有利な状況を維持したいという思いがあると想定されます。

元々の力関係において日産の方が利益を出せる会社であるため、出資比率の解消を求めていくのは目に見えるため、カルロス・ゴーンを日産の実質的トップに据えておけば現在のルノー親会社状態の経営が維持できると思い、カルロス・ゴーンをトップに据えていたと思います。

日産側もねじれ解消に向けて理由をつけてカルロス・ゴーンを退任に追い詰め、これから動こうとしている状況だったかと思いますが、会社の経営責任は社長にあり、実質的にはカルロス・ゴーン氏が経営していたとしても責任全てをカルロス・ゴーンだけに有り、という事は今回退任に追い込んで理由としては不可能かと思います。

そこをフランス政府が付け込み、カルロス・ゴーンの退任は認めるから次の経営者は私達が使いやすい者を送り込ませなさい、と筆頭株主として要求しているのです。

当然日産としてはこちらの要求は受入られません。ただし、言っている事は非常に全うであるため、要求自体を退ける事は難しいかもしれません。

 

日産の今後の方針は?

では日産としてはどのような対策を取っていくのか?

こちらは改定アライアンス基本合意書(RAMA)という契約書で日産はフランス政府の干渉を受けたと想定する場合、ルノーの合意なしにルノー株の買い増しが出来る、という契約があります。こちらを最終手段として利用し、ルノーの持ち株比率を25%以上までルノーからの議決権を否定出来るため、要求を退ける事が出来ます。

ただし、こちらは本当に最終手段であり、持ち株比率10%上げるというのはかなりの資金力を必要とするためその他の手段を検討している段階かと思います。

いずれにしろ、西川社長はカルロス・ゴーン氏の会見をした際にここまでのストーリーは描き、連携は解消しなくても現在の出資比率のねじれ解消までは自身の使命として完遂するつもりかと思います。

あそこまで容易周到に記者会見を準備したので、きっと着地点を描いていると思っており、今後の動向に注目です。

 

まとめ

経営統合は合併と違って自社の制度や文化は残る

出資比率ねじれによって議決権有無の差が有り、今回の統合要求を簡単には断れない

最終手段は改定アライアンス基本合意書(RAMA)だが、利用するかはまだ未知数

 

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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